お盆にはご先祖さまの乗り物にするため、なすときゅうりに割りばしをさして作った牛・馬を飾ります。牛は外、馬は内向きに飾ることが多いのです。
また、浄土真宗ではお盆への考え方が違うため、なすの牛・きゅうりの馬は飾りません。
年に一度のことですから「なすときゅうりの向きはどっちだったっけ?」と、忘れてしまいますよね。
ご先祖さまが牛と馬のどちらに乗るのかと、飾る向きにもそれぞれ意味があるのです。
なすの牛、きゅうりの馬は簡単に作れるので、子どもと一緒に作りながら、飾る意味やお盆の由来を後世にも伝えていきたいですね。
この記事ではお盆に飾るなすの牛・きゅうりの馬の作り方とそれぞれの意味、役目を終えたあとの処分方法、地域によって違うお盆の時期について詳しく解説します!
Contents
お盆のなすときゅうりの向きと意味

なすときゅうりで作る牛・馬の名前
お盆は、家族や親戚が集まって一緒に食事をしたり、お墓参りに出かけたり、私が子供のころから好きな行事の一つです。
遠くに住んでいてなかなか会えない親戚が帰ってくるのを心待ちにしていた記憶があります。
また、ご先祖さまの霊がこの世に帰ってくる期間ですね。
お盆にはご先祖さまをお迎え・お送りする時の乗り物にするため、なすときゅうりで牛と馬を作るのです。
なすでできた牛を精霊牛(しょうりょううし)、きゅうりでできた馬を精霊馬(しょうりょうま、または、しょうりょううま)と呼ぶのですよ。
なぜ、なすときゅうりなのか、はっきりした根拠はないのですが、なすもきゅうりも夏に多く採れる旬の野菜で、手に入りやすかったからと言われています。
お盆に飾る精霊牛・精霊馬の意味
牛は足が遅いため、ゆっくり移動し、馬は早く移動できる動物ですね。
ご先祖さまの霊がこの世に帰ってくる時に、馬を使って早く帰宅してほしい・牛に乗ってのんびりあの世へ戻ってほしいと思いを込めて精霊牛・精霊馬を飾ります。
しかし、地域や家によって、その思いは違うのです。3パターンの例をご紹介します。
- 馬を使って早く帰宅してもらい、牛に乗ってゆっくり移動し、あの世へ戻っていってほしい
- 丁寧にお迎えしたいから、牛に乗ってゆっくり帰ってきてほしい。あの世へは迷わずお戻りいただくよう、馬に乗ってもらう
- 帰宅の時も、あの世に戻る時もご先祖さまには馬に乗ってもらい、お供えをたくさん持って帰ってもらえるよう、牛に持たせる
どのパターンにせよ、ご先祖さまを大切に思い、考えられた意味だといえますね。
精霊牛・精霊馬は精霊棚に飾る
精霊牛・精霊馬は精霊棚(しょうりょうだな)または盆棚(ぼんだな)と呼ばれる棚を準備し、その上に飾るのが一般的です。

昔ながらの正式な精霊棚の準備は少したいへんなのです。仏壇の前に組み立てた精霊棚の上に真菰(まこも)というイネ科の植物で編んだゴザを敷きます。
精霊棚の四隅に竹を立て、上の方をしめ縄でぐるっと囲み、ほおずきや昆布、そうめんを吊るすのです。
しかし、現在は、スペースの確保が難しく、竹も簡単には手に入らないので、正式な精霊棚を準備する家庭は珍しいかもしれません。
また、狭いスペースしかなく、ひな壇タイプの精霊棚が置けない場合は、代わりに経机(きょうづくえ)を使うこともできますよ。

では、精霊棚には何をどのように飾ればいいか、ご紹介します。
精霊棚に飾るもの一覧
- 位牌(いはい)
- 御膳(ごぜん)
- 香炉(こうろ)
- ろうそく立て
- おりん(たたくと「チーン」と鳴る仏具)
- 生花(せいか)
- 水の子(なすやきゅうりをさいの目切りに小さく切り、洗ったお米と混ぜたもの)
- ミソハギの花(はすの葉を入れた器に水を注いで、ミソハギの花を5〜6本、束にして側にそえる)
- 果物や故人が好きだった食べ物
- 精霊牛・精霊馬
精霊棚の代わりに経机を使用する場合は一部を省略してもOKです。

精霊牛・精霊馬の向き
さて、精霊牛・精霊馬の頭の向きも宗派や地域、家によっても違うのですが、考え方のパターンを3つご紹介します。
- ご先祖さまの霊を迎えに行く精霊馬は精霊棚の内側、お送りする精霊牛は外側に向ける
- 霊が東の方角から帰ってくると考える場合、精霊馬が東から西に向かってお連れするので西向き、お送り時は精霊牛を東向き
- お迎えする時は精霊馬を家の中の方へ、お送りする時は精霊牛を玄関や家の外の方へ向ける
地域や家、宗派によって供える物や飾る場所、精霊馬・精霊牛の向きは違うので、今までどうしてきたのかを地域や家の年長者に聞くとよいですね。
これで精霊棚を準備できそうですが、いつから設置すればよいのでしょうか。実はお盆の時期は地域によって違う場合があるのです。次の項目でご紹介します!
お盆のなすはいつから飾る?地域で違う時期

7月にお盆をする地域がある
私が住んでいる地域は8月にお盆をするので、7月にお盆をする地域があることを、恥ずかしながら最近まで知りませんでした。
8月にお盆をする地域が多いのは、明治時代の改暦が由来しています。改暦前のお盆は7月だったのです。
日本は明治5年まで太陰太陽暦(たいいんたいようれき)を使っていました。
欧米と暦(こよみ)を統一するため、明治6年に太陽暦を取り入れたところ、お盆が1か月遅れてしまったのです。
政府によって、明治5年12月3日であるところを、明治6年1月1日に変更されてしまいました。
旧暦であれば、7月が本来のお盆で、12月から7か月後になりますが、新暦では1月から7か月後の8月が旧暦の7月になるのです。
このようにして全国のほとんどの地域で旧暦に合わせて、8月13〜15日(地域によって16日まで)にお盆が行われるようになりました。
しかし、7月13〜15日(地域によって16日)にお盆を行う地域もあるのです。
北海道の函館・根室、東京、横浜、石川県の金沢市、静岡県の浜松市・西部の遠州地方にある家庭の多くが7月にお盆を行います。
理由は諸説あるのですが、明治政府が新暦7月にお盆をするよう推奨し、政府のお膝元であった東京・横浜には浸透したと考えられています。
また、農作業が忙しいからという理由で新暦7月のお盆が定着せず、一部の地域のみにとどまったのだとか。
函館については8月15日にある函館八幡宮の祭りとかぶらないようにしたとの説もありますよ。
精霊牛・精霊馬はいつから飾るのか【お盆の初日】
地域によってお盆の時期が異なることがわかりました。では、いつから精霊棚を設置し、なすときゅうりで作った精霊牛・精霊馬を飾るといいのでしょうか。
それはお盆の初日である「迎え盆」に飾るといいでしょう。7月がお盆の地域は7月13日、8月なら8月13日ですね。
ご先祖さまの霊はいつから帰ってくるかと言うと、13日の夜です。
精霊棚の準備を始める前に、なすやきゅうりなどの材料は手配しておきましょう。
精霊棚は12日か13日の午前中くらいまでには設置し、精霊牛・精霊馬は12日の夕方から13日の朝には忘れずに作っておきたいですね。
次の項目では、なすときゅうりで牛と馬を作る方法をご紹介しますよ。
お盆になすをお供え!牛と馬の作り方

お盆の精霊棚にお供えとともに飾る精霊牛・精霊馬の作り方をご紹介します。
ぜひ親子で一緒に作ってみてくださいね♪私の子どもはまだ小さくて親子では作れませんが、大きくなったら一緒に作ろうと思っていて、今から楽しみです。
準備するもの
- なす…1本
- きゅうり…1本
- 割りばし…2膳(ぜん)
- カッター
なすもきゅうりも少し曲がっているものを使うと、動物らしく見えますよ♪
作り方
- 割りばしすべてを6対4の長さにカッターを使って少しずつ切ります
- 牛と馬の足に見えるように短い方をなすに、長い方をきゅうりに4本ずつさします
- それぞれ自立するように調整して完成です!
カッターを使う時は十分注意して安全に作業を行ってください。
完成した精霊牛・精霊馬は、精霊棚の空いているところに他のお供えと一緒に飾ってくださいね。
今回は手に入りやすい割りばしを使いましたが、他にもマッチ棒やつまようじ、オガラを使ってもよいでしょう。
オガラはあまり聞き慣れませんが、麻の皮をむいた茎の部分のことです。麻は日本神話にも登場し、魔除けや邪気を祓う神聖な植物として扱われてきたのですよ。
魔除けになるなら割りばしの代わりに使ってみるのもいいですね。私も次回作る時はオガラで作ってみたいと思います。
オガラはお盆の時期になるとスーパーやホームセンターのお供え・お盆用品として販売されていますので探してみてください。
では、お盆が終わったあと、作った精霊牛・精霊馬はどうすればいいのか、次の項目でご説明します!
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お盆のなすを処分する一般的な方法は可燃ごみに捨てる

お盆期間にご先祖さまを送り届ける大役を果たした精霊牛・精霊馬を簡単に処分することに気がひけるのは私だけでしょうか。
がんばって作った精霊牛・精霊馬ですので、感謝の気持ちを込めてお別れしたいと思います。
一番簡単な処分方法は、半紙にお清めの塩と精霊牛・精霊馬を一緒に包み、可燃ごみに捨てます。
なす・きゅうり・割りばしなど可燃性の材料ですから可燃ごみで問題ありません。
昔は海や川に流していたのですが、この処分方法は現在では法律違反となるのでやめましょう。
また、庭や畑をもっている家庭であれば、土に埋めるという処分方法もありますよ。
精霊牛・精霊馬はなすときゅうりでできているので、料理に使いたくなる気持ちもわかりますが、食べないようにしましょう。
なすもきゅうりも日持ちせず、傷んでいる可能性があるからです。
ところで、お盆に精霊牛や精霊馬は飾らない宗派があるのをご存知でしょうか。そもそもお盆がどうして始まったのかも気になります。次の項目で紹介しますね。
お盆になすは宗派によっては飾らない【浄土真宗】

お盆には、なすときゅうりで精霊牛・精霊馬を作り、ご先祖様を迎える文化についてご紹介してきましたが、そもそもなぜ、お盆ができたのでしょうか。
それは、日本に古くから存在した、先祖の霊を年に1、2回供養する文化と、中国から伝わった仏教が結びついたことが由来とされているのです。
仏教を開いたお釈迦さまの弟子、目連(もくれん)が、神通力(じんつうりき)で、亡くなった母を見ると、餓鬼道(がきどう)という厳しい世界に落ちて苦しんでいました。
お釈迦さまに相談すると、「7月15日に修行僧が90日の修業を終えて集まるから、たくさんのごちそうをふるまい、供養するように」と言います。
目連がそのとおりにすると、修行僧はたいへん喜び、それが餓鬼道まで伝わり、母を救うことができたというのです。
そして、お釈迦さまは、7月15日に食べ物をたくさん用意し、多くの人を供養するという、良い行いをすればご先祖さまが救われ、生きている人も幸せになれると説きました。
この教えがきっかけで現在のお盆ができたと言われているのですよ。しかし、宗派によっては異なる考え方もあるのです。
浄土真宗は、人が亡くなると仏さまになり、浄土という悩みや苦しみのない、清らかで幸せな場所へ行くと考える宗派です。
そのため、餓鬼道に落ちることもなく、霊となって帰ってくることもないと考えます。
ですから浄土真宗は、お盆に精霊棚を用意したり、なすやきゅうりで飾り物を作ったりなど、ご先祖さまを迎える風習はない宗派なのです。
浄土真宗は、お盆に何もしないのではなく、ご先祖さまに感謝して仏法(仏が説いた教え)を聞く日なのだとか。
なすときゅうりで工作する機会がなくて少しさみしい気もしますが、ご先祖さまを大切にする気持ちはどの宗派も一緒なのですね。
まとめ

- なすで作る牛は精霊牛、きゅうりの馬は精霊馬という
- なすときゅうりで作る理由は夏野菜で多く採れるからが一説
- 精霊牛・精霊馬には馬に乗って早く家に帰ってきてほしい・牛に乗ってあの世にゆっくり戻ってほしいなど意味がある
- 精霊牛の頭を精霊棚の外向き・精霊馬は内向きに飾るのが一般的
- 精霊馬を西向きに・精霊牛を東向きにするパターンと精霊馬を家の中の方・精霊牛を玄関や家の外の方向へ向けるパターンも
- 北海道の函館・根室、東京、横浜、石川県の金沢市、静岡県の浜松市・西部の遠州地方ではお盆は7月
- 精霊牛・精霊馬はなす・きゅうり・割りばしがあれば簡単に作れる
- お盆が終わったら精霊牛・精霊馬はお清めの塩とともに半紙に包んで可燃ごみへ
- 浄土真宗ではお盆にご先祖さまの霊が帰ってくるとは考えない
宗派や地域、家によってお盆のしきたりや考え方はさまざまなのですね。
お盆の時期にはご先祖さまに思いをはせながら、現在生きている人たちが交流し、絆を深めていく機会にしたいと思います。